みなさまごきげんよう!! お元気でいらっしゃいますか? わたくしは、第2回のゲストとして出演させてもらいました『身』でございます。 桃舟さん、ルシェルちゃん、先日は『桃舟の漢字ハウス』へお招きいただきありがとうございました。 とても素敵な時間を共有でき嬉しゅうございました。 わたくしたちが住んでいる漢字の世界でもこちらでのことがとても話題になっておりますのよ。 みんな出番を待ち望んでおりますので、今後もよろしくお願いしますね (^^♪
早速ですが本題に入らせていただきます。 以前、『人』さんからの手紙で、甲骨文字についてお話をされておりましたけれど、わたくしは金文について少しお話をしたいと思います。 わたくし『身』がこの世に金文として生まれたのは西周時代(B.C.1000年頃)になります。 皆様は金文とは何かしら?てお思いですよね? 桃舟さんが青い色紙にゴールドで表現してくれていますので、ゴールドの文字?と思ってる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「身」の金文
実は金文とは青銅器(せいどうき)に鋳込(いこ)まれた文字のことをいいます。 金文の金は金属の金と思っていただければわかりやすいですわ (^_-)-☆
金文が生まれたのは、甲骨文字が神様と王様との交信、つまり占いの為に使われていたのと同じ殷時代(B.C.1300年頃)になるのですが、生まれた当時は、「図象記号」「図象文字」「族記号」と呼ばれるマークのようなものが中心で、鋳込まれた文字の数も少なく、まだ文字としては十分に確立されておりませんでしたの。 その頃の青銅器は主に武器や祭器(神への儀式に使用するもの)として利用されていたのですが、わたくしが生まれた西周時代になってからは、武器や祭器としてだけでなく、政治の道具としても利用されるようになりました。 そして、より多くの文字が鋳込まれるようになっていったのです。 殷の次に王朝を築いた周の青銅器に鋳込まれている銘文には、殷時代のような神や祖先神にではなく、別の部族や民族などの人間に向けたもので、主に契約の言葉を記しておりました。 契約の内容とは、領土を与える代わりに納税や兵役の義務を課すといった条件が記されており、いわば封建制度(ほうけんせいど)の始まりのようなイメージでしょうか。 この頃には文字もどっしりと大きく構えた形や太く豊かな線質、造形が柔軟で曲線が多く装飾性のあるものが出てきており、青銅器に鋳込まれた銘文も多いもので約500文字(毛公鼎)の長文であったりと、わたくし達、金文の活躍する舞台が増え、漢字は華やかな金文全盛期に突中していったのですのよ。
毛公鼎(国立故宮博物院HPより) 高さ53.8cm、口径47.9cm、重さ34.5kg、銘文約500文字
最後にみなさまにお話しをしたいことがございます。 実は「殷」という名前の国は本当は存在しておらず、当時そこに暮らしていた人々は自らが住む都を「商」とよんでおりました。 それがなぜ、「殷」とよばれるようになったと思いますか? 中国の歴史書である「史記」の中では、殷については「酒池肉林(しゅちにくりん)」といった言葉に代表されるように、一部の支配者が贅(ぜい)を極(きわ)め、民衆や他の部族を虐(しいた)げている、悪の象徴のように記されています。 そのような状況で「周」は周囲の部族たちと協調して戦い、約600年続いた「殷」を滅ぼしたのです。 「史記」の中ではこの戦いを「牧野の戦い(殷周革命)」として記されており、わずか一日で勝敗が決したそうです。 「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉がございますわよね? まさにその通りで、「殷」という名前は、「殷」を滅ぼした人たちがつけた名前であり、このようなひどい意味が込められているのですのよ。 金文の「殷」という字は、わたくし『身』のお腹を叩くという行為から生まれて来た漢字であり、甲骨文字には「殷」という文字はございませんの。 わたくしを叩くなんて、ひどいと思いませんか!? それだけ当時の人の「殷」への憎しみが込められていたのかもしれませんね。
「殷」の金文
わたくしがこの話をさせて頂いたのは、「殷」が悪い国だったという意味ではなく、ものの見方というのは、見る人によって異なり、歴史も人の都合で書き換えられることがあるということですの。 勧善懲悪(善いことを勧め、悪いことを懲らすこと)という言葉がございます。 今回の例でいうと「殷」が悪で「周」が善ということになるのですが、善悪というのは人の立場やものの見方で変わるということ、そこを「桃舟の漢字ハウス」をご覧の皆様にはご理解いただきたいと思いまして、この話をさせていただきました。 人間社会で生きていく中、常に人の悩みは尽きないと思います。 他人の行為を「悪」ととらえて、自分の考えを「善」として物事を進めようとしても、なかなか思うように進まないと思います。 それは人それぞれが考える「善と悪」が異なるからで、大半は自分の思うようにならないのが人間社会だと思います。 うまくいかずに悔しい思いをすることもたくさんおありでしょうが、腹立たしいことに気持ちを向けてしまっていては、有限の時間の中で生きている人たちにとってもったいない限りです。 時は金なりと申しますし、決して過ぎた時間は戻ってきません。 いつまでもそこに立ち止まるのではなく、今置かれた状況をできるだけポジティブにとらえて、前に進んで行っていただきたいのです。 最後は少々熱くなってしまいましたが、わたくしの気持ちがみなさまに届いて、「人身受け難し、今すでに受く」の意味を思い出していただければ幸いでございます。 それではまたいつか会う日まで、ごきげんよう!
「桃舟の漢字ハウス」をご覧のみなさまへ 金文代表 『』 より!!
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