桃舟の漢字ハウス第26回

お待たせしました。
四季レンジャーのフィナーレを飾るのはこの方。✨
本日のゲストは『冬【ふゆ】』さんです~♪

ジャジャーン!
4人そろって四季レンジャー!

自分が『冬【ふゆ】』です。

 

<甲骨文字>

『冬』さんこんにちは。
4番目に登場の『冬』さん、今日で四季レンジャーさんが終わってしまうのは寂しいですね。
早速ですが自己紹介をお願いします。

承知しました。
生まれは商時代の甲骨文字です。
年齢はおよそ3300歳。
季節を表す四季の一つの『冬』
一年でもっとも寒い季節となります。
みなさんは自分のことを『冬(ふゆ)』さんと呼んでます。

『冬【ふゆ】』さん、よろしくだワン! 

『冬』さんが生まれた甲骨文字のお姿を見ても、何が由来なのか皆目見当(かいもくけんとう)がつかないのですが?

季節の「冬」を忘れて頂いて、私の姿は何に見えますか?

サクランボ?

違います。
では金文をご覧ください。

 

<金文>

 

ルシェルはヘッドホンに見えるだワン。

ルシェル、3,300年前にヘッドホンなんてあるわけないじゃない!
それになんでサングラスなんかしてるのよ?

💢それを言うんだったら、サクランボもないだワン!💢

まぁまぁ、落ち着いて。
ルシェルちゃん、自分が生まれた頃にはもうサクランボはあったんですよ。
でも、お二方とも、不正解です。
実は、自分は糸の両端(りょうはし)を結(むす)んだ形なんです。 

えーーーーーー!!!

次に小篆をご覧ください。

 

<小篆>

「仌」が増えましたね。

そうなんです。
こちらは、「仌(冫:ひょう)」と呼ばれ、氷を意味します。
「冫」を加えて『冬』を表すようになったのです。

そうなんですね。
でも、先ほど仰ってた「糸の両端(りょうはし)を結(むす)んだ形」はいったい何を表しているのですか?

先ほど自分を紹介してくださった時、「四季レンジャーのフィナーレ」と仰ってましたよね。

はい、四季レンジャーの最後、終わりを飾られる方として紹介しました。

「終」という漢字の中に、『冬』が含まれてることに気づいておられますか?

あ、ほんとだ、『冬』さんがいますね。

そうなんです。
自分『冬』は、元は「おわり」を表す文字だったのですが、「糸」の「おわり」を結ぶことから、「冬」に糸偏をつけて「終(おわり)」という漢字が作られたのです。

つまり元は、「おわり」という意味の漢字だったけど、いつしか最後の季節を表す「冬」として使われるようになったということですね。

はい、そんなところです。
では、残りの漢字もご覧ください。

 

<隷書>

 

<草書>

 

<行書>

 

<六朝楷書>

 

<楷書>

 

ところで、冬という季節にはどんなイメージがありますか?

「冬」と言えば、やっぱり雪ですね~。
寒いのは苦手です。冬はなかなか布団から出られません。 (*_*;   

ルシェルは冬生まれだから、冬は好きだワン!

あれ? ルシェルは8月生まれだよね?

ルシェルは南半球のオーストラリアで生まれたから8月は冬だワン!

そう言えばそうだったね。 (*_*;
ルシェルはモフモフだから、冬でも寒くないんだね!
羨(うらや)ましい~。 (^^♪

桃舟先生だって、皮下脂肪がたくさんあるから、寒くないだワン!

💢皮下脂肪があっても寒いものは寒いのっ!💢
ダイエットしなくちゃ!

桃舟先生、応援するだワン!
ところで冬と言えば、ルシェルはこの短歌を思い出すだワン!
「田子(たご)の浦(うら)に うちいでてみれば 白妙(しろたえ)の富士(ふじ)の高嶺(たかね)に 雪は降(ふ)りつつ」

奈良時代の歌人、山部赤人(やまべのあかひと)の歌だね。

「令和」の由来にもなった万葉集の中にある歌だワン。
この歌は新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)や小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)にもあるだワン!

ルシェル、百人一首好きだもんね。

↑現実世界のルシェルの手(前足)

「田子の浦の海岸に出てみたら、遠くに見える富士山の頭には雪がかぶっていただワン。そしてその峰には今も雪が降り続けている~。なんと美しい光景なんだろうワン!」
って意味だワン。

日本らしい美しい冬の景色が目に浮かびます。

こんなイメージだワン。↓

では次に、私から恒例(こうれい)になった枕草子の冬を紹介しますね。
「冬はつとめて。雪の降(ふ)りたるは、言ふべきにもあらず。
霜(しも)のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭(すみ)持てわたるも、いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶(ひおけ)の火も白き灰(はい)がちになりてわろし。」

「冬はつとめて」っていつのことだワン?

現代訳を今から読むので聴いててね。
「冬は早朝(そうちょう)が趣(おもむき)あるわよね。雪が降ったのは言うまでもないわ。霜が真っ白に下りたのも、またそうでなくても、とても寒い朝、火を急いで起こして、炭を持って御殿(ごでん)を渡(わた)るのも、冬の朝らしくて素晴(すば)らしいわ。昼になり、だんだん寒さが薄(うす)らいでゆくと、丸(まる)火鉢(ひばち)の炭火(すみび)もついほったらかしで白い灰がかぶったままになっていて、よくないわね。」

早朝だったんだワン!
つとめてって、
勤(つと)める?
務(つと)める?
努(つと)める?
勉(つと)める?
のどれになるだワン?

この場合の漢字は「夙(つと)めて」と書くの。
難しいよね。
音(おん)だけだと、ルシェルが言ったようにたくさんの同音異義語(どうおんいぎご)があるのよね。
でも、漢字だとそれ自体に意味があるから分かりやすいのよ。
これからは「夙(つと)める」も入れてあげてね。

「夙めて」が読めるとかっこいいだワン!
「夙」にはどんな意味があるのだワン?

「夙」の甲骨文字を見ると分かりやすいので、ちょっと見てみてね。

 

<甲骨文字>

 

元は月を見上げている人の姿を表していたの。
そこから、まだ月が見える夜明け前の早朝を表すようになったと言われているのよ。

そうなのかワン。
漢字っておもしろくて、むつかしいだワン!

自分たち漢字には、皆それぞれに生い立ちがあり、ドラマがあります。
それをみなさんにも分かって頂けたら嬉しいです。
自分たち漢字を丁寧(ていねい)に心を込めて書いて頂けると嬉しいですし、適当に乱雑(らんざつ)に書かれると悲しい気持ちにもなります。

口数が少ない分、『冬』さんの言葉には重みがありますね。
もっと漢字さん達のことを思いながら、心を込めて字を書いていきたいと思います。
『冬』さん、四季レンジャーの皆さん、本日はありがとうございました。

どういたしまして。
でも実はまだお伝えしたいことがあるんです。

では、みなさん、また来週も来ていただけますか?

ラジャー!

『冬』さんのプロフィールは、こちらにまとめてあるので、見てほしいだワン!

今日も最後まで読んで頂きありがとうございます。
次回も四季レンジャーさんにお話を伺いたいと思いますので、 乞うご期待!

 

桃舟の漢字ハウス第27回は こちら になります。